エデュケーション
iPhoneとTwitterで就活廃止論 - 佐藤孝治氏インタビュー
Taro Matsumura
2010.01.30

リーマンショック以降、日本市場は世界的にも唯一落ち込み、修飾活動も混迷を極めている。100枚エントリーシートを書いたが決まらない4年生もいるような現状を、スマートフォンとソーシャルメディアは救えるのでしょうか?
2010年1月16日に『<就活>廃止論ー会社に頼れない時代の仕事選び』(PHP新書)を出版したジョブウェブ株式会社代表取締役社長、佐藤孝治氏(@kojisato515)。実は筆者が大学院卒業後、そのままジャーナリストになることを決めるきっかけとなった方のうちの一人でもあります。
10年来、採用活動について企業のコンサルティングやアドバイザリーを行いながら、学生の就職活動を支援してきた佐藤氏に話を聞きました。
ーー今回の本を書かれたきっかけは?
「執筆は1年半前からスタートしました。10年間の就職・採用活動への取り組みをまとめる予定でした。しかしリーマンショックで、全ての前提が変わってしまいました。それまで企業は、『採用が大変』と困っていたところが、採用を辞めてしまい、呆然としました。それでも少数の優秀な人材を企業は採りに行こうとします。ここで、採用成功のノウハウ本から路線転換しました」(佐藤氏)
ーー現在、何が問題なのでしょう?
「世の中の就職活動の構造です。特に学生は、エントリーシートを書いて、面接をして、そのときに始めて自分に向き合ったり、自分の能力を伸ばそうとしますが、出遅れていることは言うまでもありません。『就活のステップ0』は生まれた瞬間から始まっているのです。広告代理店のクリエイティブ職になりたい人が、突然大学3年生になって就活塾に通っても、企業には選んでもらえません。例えば小さい頃にぱらぱらマンガを作って人に見せるのが好きだったようなバックグラウンドがある人材を求めています。そういう人たちのことを、本書では『5%人材』と呼んでいます」(佐藤氏)
ーースタートを早めたり、5%人材になるにはどうしたら良いのですか?
「やはり出会う人がポイントです。親、友人、大人達などとの出会いが、人生の流れの中で、応援の連鎖を作り始めます。きっかけとなる出会いをいかに作れるか。特に注目しているのが大学1年生です。もちろんテニスサークルも良いのですが、アイセックや企業サークルのように、他大学や社会人とふれあう環境があるかどうか、そういうことに興味を持っている友人に出会えるかどうか。
逆に社会人や経営者は、学生やお互いも含めたモチベーションアップをやろう、というメッセージにもなります。これは、10年間ジョブウェブでやってきたことでした」(佐藤氏)
ーー佐藤さんの取り組みの中で、10年前と現在で変化してきたことはなんですか?
「メディアの進化です。1つはiPhoneに代表されるような、ウェブ活用の側面で言うところのケータイとパソコンの間の端末です。また、ソーシャルメディアのような、個人が世界中とつながるためのメディアの充実も挙げられます。
iPhoneを手にする以前、ソーシャルメディアに触れると24時間パソコンがオンラインでなければならないな、と思っていました。しかしiPhoneの方が手軽にそのコミュニケーションを継続できます。もはや、24時間年賀状状態ですね。親世代は年1回の年賀状も喪中が挟まったりしてご縁が切れてしまうこともありました。
しかしソーシャルメディアでお互いの営みがリアルタイムにわかります。お互いの人生が加速していることがわかり、また視野が広がる感覚です。休暇で温泉旅行に出かけていても、世界中からそのほかの週末体験が集まってくる。ただ、私がもっと歳を取って訃報が飛び交うようになる晩年は、きついかも知れませんね」(佐藤氏)
ーーこの進化したメディアについて、学生はどのように活用すればよいでしょう?
「春から、学生は、スマートフォンとソーシャルメディアを使って、何種類かのつながりをつくっていくべきです。
まず1つは、5人でも10人でも良いので、自分の高校時代の友達とつながり続けること。これは自分のbase campみたいな存在になります。気の知れた仲間が、様々なフィールドで、お互いがんばっているね、と刺激し合い、ときどき地元で再会することも大切です。素の自分に戻れる瞬間は、変えがたい薬になると思います。
次に、日々であって増えていく仲間とのつながりを大事にすること。サークルやゼミ、授業、たまたまのコンパで知り合って『じゃ、また』と別れてそのままにならず、ケータイでもSNSでもTwitterでも良いので、近況を交わし合うことです。
そしてもう1つ、究極は『大人とのリアルな出会い』を作ることです。
Twitterは気軽で良いのですが、タイムラインにいる大人を意図的にフォローする。時には質問でも感想でも良いので、返事を書いてみる。返事が返ってくる、こない、どうしたら答えてくれるか?そういうコミュニケーションから、OBでなくてもOB訪問させてもらうなんて、素晴らしいと思います。
ちょうど、大人に弟子入りする感覚。社長でなくても、その人のTwitterを真剣に読み、応えて行くことは、その人が日々何を考え、行動し、どんな人と話をしているのかを追いかける手段になるでしょう。社会人の24時間カバン持ちをしているようなものです」(佐藤氏)
ーーリアルな出会い、カバン持ち、というのは面白い概念ですね。
「1つ注意すべきは、出会うことを目的にしない、ということです。学生とは言え、Twitterの文字に乗ると大人と同じ環境。何らかの示唆を与えたり、議論を深めていく、あるいはキチンとしたアウトプットを用意する、というポイントを押さえる必要があります。ただでさえもタイムラインは非常に流れが速いので。
ソーシャルメディアとスマートフォンは、タイムラインを手軽に追いかけることができ、また出会ったことがない大人を知る、話せる敷居をかなり下げていると思います。就職を控える学生も、キーワード検索から、人を介した情報収集とコミュニケーションで行動を起こしていく訓練が、もしかしたら新しい就職活動の作法になるかも知れません。
この春から大学生になる人たちは、100人の大人と絡み、50人に出会え、と言いたい。大人も、自然に、甘すぎず、真剣に導いてあげるようなコミュニケーションを取ってあげて欲しい。そういう日本になったらいいな、と思っています」(佐藤氏)
インタビューを終えて、津田大介氏のTwitter本の話題になり、「続きはTwitterで」というフレーズの良さ、自然さについて語っていた佐藤氏。2010年2月〜3月にAppetizer Japanが展開する、Apple Store, Shibuyaでのイベントシリーズにも、3月10日 19:00から登場する予定です。お楽しみに。